インド一人旅で、ものごいを考えた。女の子にお金をあげたが、上手くいかないもんだ。
目次
決して10ルピーを離さない女の子
インド一人旅で、もう一人の印象深かったものごいは、サルナート(ブッダが初めて説法をしたところ)にいた女の子のものごいです。
インドでは連日45℃を超えていて、あまりにも暑かったので私は道端でアイスを売っていたインド人からアイスを買うことにしました。アイスは20ルピー(35円)です。
すると、そこで子供のものごいが私のところに来てジーっと私を見るのです。小学校にあがってるかどうかくらいの年頃で、かわいらしい女の子でした。やや控えめな様子で恥ずかしそうにしているその女の子に、奥ゆかしいものを感じた私は10ルピーあげることにしました。
すると、10ルピーもらったその子は立ち去るわけでもなく、アイス屋のおじさんや私の持っているアイスを見ています。
アイス屋のおじさんが私に「この子はアイスを欲しいんだよ。アイスを買ってあげなよ。」と言ってきました。
さっき10ルピーを女の子にあげてあったので、もう10ルピーをアイス屋おじさんに渡しました。
さっき私があげた10ルピーを女の子がおじさんに渡せば合計で20ルピーでアイスが買えるのですが、その女の子は10ルピーをおじさんに渡しません。
10ルピーを渡しなよと促しましたが、頑として渡しません。
で、おじさんが「お兄さん、あと10ルピーよこしなよ。この子にアイスを買ってあげなよ」と言ってきたので、私は何だかだまされているような気になってきて、バカらしくなってその場を去りました。
アイス屋のおじさんと女の子がグルだったのかどうかわかりません。結局、私は自分のアイスを20ルピーで買って、女の子に10ルピー、そしてアイス屋のおじさんにも10ルピーあげたことになりました。
アイスが20ルピーで、女の子にあげたのが10ルピーだったので、そういう展開になりましたが、女の子にあげるお金を10ルピーという金額にしたのは私なので、おじさんと女の子がグルで私に詐欺を仕掛けたということではありません。
ものごいの女の子が印象深かったというわけではなく、アイス屋との一連のやり取りが印象深かったということでした。
インドでは、寄付しようとしても、なかなかすんなりとはいかないのです。
ものごいにお金をあげるべきなのか
100円前後をあげて「ありがとう」と感謝されて気持ちよく終わる、というストーリーはインドではまず無理でしょう。
どうしますか? お金をあげますか?
あげたところで「もっと」と余計にしつこくされるだけですよ。それでも、あげますか?
100円前後あげたところで、数食分くらいにしかなりません。根本的な解決にはまったくなりません。奮発して1000円出したところで、やはり根本解決にならないという点で大した違いではありません。
もちろん、別に「根本的解決」を目指して、お金をあげるわけではないのだと思います。目の前の大変そうな子に、純粋に少しでも何とかしてあげたいという「気持ち」からあげたいということだと思うんです。気持ちであげてる、つまりこちらの気持ちをあげているようなものなのですが、でも、すんなり「ありがとう」とはならない。
難しいなと思います。
また、貧困で苦しんでいるのは1人だけではありません。日本人は豊かなんだから積極的に助ける「べきだ」というのであれば、じゃあ他の人も助けるべきだとなります。お金をあげて助けてあげるべきだと考えると、キリがなくなります。
「あげない」ことに決めて、どんな時も一切あげないというのも考え方の一つです。
「優しい自分でいたい」という自己満足を目的としてボランティアや寄付をするのなら、それはただの偽善なのであって、いっそしない方がいいという考え方もあると思います。
基本は「あげない」ことにしました。
私の今の結論は、「基本は『あげない』。でも、自分が『あげたい』と感じた時は『あげる』」です。いろいろ考えた末にそういう考え方でいることにしました。
でも、あげる場合でも、感謝されることを期待していると裏切られたような嫌な感じで終わってしまいがちなので、感謝の気持ち・言葉などの見返りは求めずに、あくまでもこちらが「一方的にあげる」というあげ方です。
ビジネスとしての物乞い
そして、ものごいをビジネスにしているという噂もあります。
「スラムドッグ・ミリオネア」という映画をご存知ですか?
下に紹介しておきます。アカデミー賞8部門獲得しています。
映画の中でマフィアが身寄りのない子供を集めて、ものごいをさせて寄付金を稼ぐ「ビジネス」をしています。
「物乞う仏陀」by石井光太 も紹介しておきます。
マフィアがものごいをビジネスにしているという話の真偽を取材したお話です。他にもヘビーな話だらけの本です。
アジアでは下手な大卒サラリーマンよりも、ものごいの方が稼ぎが大きいということも考えられます。
私は、自分の目の前のものごいは「本物」のものごいかと疑うようになってしまいました。
インドではもはや仕事はいくらでもあるので働こうとすれば働ける。だけど、あえてものごいをしているという説もあるようです。ものごいの方が稼ぎが良かったり、楽だからです。そういう楽をしてお金をもらおうという考え方の人たちには、自分はお金はあげないんだというインド人の考え方を聞いたことがあります。
インドの新しい富裕層
「インドの衝撃」NHKスペシャル取材班
台頭してきた新富裕層を紹介しています。平均的日本人より豊かです。
また、インド工科大学の紹介と、そこの合格を目指して頑張る貧困村の少年も取材しています。
インドは究極の格差社会です。
NHKはいい取材をしますね。電子版はないですが、紙の中古本で1円で買えるようなので、ご興味があればぜひ。